木造軸組工法


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柔構造について
 1300年前に建てられた法隆寺の五重塔は木造の高層建築といえますが、歴史に残る大地震や記録的な台風にも倒れませんでした。その秘密が柔構造にあります。
 前回述べましたように、日本の在来工法は、地震などの力をしなやかに受け流して耐える柔構造の考えでできています。塔を外から眺めると分かりますが、各層を支える壁の木組みには遊びが作ってあり自由に動くようになっていて、ここが地震や台風の時の揺れやしなりを吸収するクッションの役目をします。塔がしなっても直接、壁に力がかからないのです。塔全体の重量は、中心に通っている太い柱(心柱)で支えます。土台、桁(梁)、及び軸となる柱で立方体を作る、この建築方法を木造軸組工法と呼んでいます。
 一方、木質系プレハブ住宅やツーバイフォー住宅のように、建物を支える耐力壁としてベニヤ板(構造用合板)を利用するものを壁式構造といいます。この工法は地震などの力を受け止めて動かないようにしてしまおうという考えに立っています。

日本の風土に合った建築を
 木造建築は、中国の殷の時代にさかのぼり、わが国でも千数百年の歴史を持ちます。気候風土を踏まえ、木の性質を良く理解した利用法を編み出した日本人の知恵と工夫が集積されて木造建築は大きく発展しました。建物も長く持ち、さらに柔構造という方法で地震や台風にも強い建築が育ちました。
 亡くなられた日本の超高層建築の先駆者で、霞ヶ関ビルを設計した武藤清氏が、鉄筋コンクリートのような剛構造では不可能といわれた超高層ビルを五重塔の柔構造をヒントに可能にした話は有名です。しなやかな丈夫さというものが建築の強さにとってどんなに大切かを物語っています。


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